2015年9月30日水曜日

火遠理命:鵜葺草葺不合命


 出典:歴史学講座「創世」 小嶋秋彦

 ≪アズミ族の正体≫火遠理命:鵜葺草葺不合命

 課題:阿曇族と天孫降臨伝承
    ―海神の宮の物語が隠している日本の創世―

 出典:「日本古典文学大系」:144~147頁
     発行:岩波書店

 於是海神之女、豐玉毘賣命、自參出白之、

 妾已妊身今臨産時。

 此念、天神之御子、不可生海原。

 故、參於到也。

 爾即於其海邊波限、以鵜羽爲葺草、造産殿。

 於是其産殿、未葺合、不忍御腹之急。

 故、入坐産殿。

 爾將方産之時、白其日子言、

 凡佗國人者、臨産時、以本國之形産生、
 
 故、妾今以本身爲産。願勿見妾。

 於是思奇其言、竊伺其方産者、化八尋和邇而、

 匍匐委蛇。

 即見驚畏而遁退。

 爾豐玉毘賣命、知其伺見之事、以爲心恥、

 乃生置其御子而、

 白妾恆通海道欲往來。

 然伺見吾形、是甚怍之。

 即塞海坂而返入。

 是以名其所産之御子、

 謂天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命。

 【訓波限云那藝佐、訓葺草云加夜】

 然後者、雖恨其伺情、不忍戀心、

 因治養其御子之縁、

 附其弟玉依毘賣而、獻歌之。

 其歌曰

  阿加陀麻波 袁佐閇比迦禮杼 斯良多麻能

  岐美何余曾比斯 多布斗久阿理祁理

 爾其比古遲、【三字以音】

 答歌曰、

  意岐都登理 加毛度久斯麻邇 和賀韋泥斯 伊毛波和須禮士

 余能許登碁登邇

 故、日子穗穗手見命者、坐高千穗宮、伍佰捌拾歳。

 御陵者、即在其高千穗山之西也。

 是天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命、

 娶其姨、玉依毘賣命、生御子名、五瀬命。

 次稻氷命。次御毛沼命。

 次若御毛沼命、亦名豐御毛沼命、

 亦名神倭伊波禮毘古命。

 四柱 

 故、御毛沼命者、跳浪穗、渡坐于常世國、

 稻氷命者、爲妣國而、入坐海原也。


 是(ここ)に海の神女、豐玉毘賣の命、

 自ら參出(まゐで)て白ししく、

 「妾(あ)は已(すで)に妊身(はら)めるを、

  今産む時に臨(な)りぬ。

  此を念(おも)ふに、天つ神の御子は、

  海原に生むべからず。

  故、參到(まゐでき)つ」。とまをしき。

 爾に即ち其の海邊の波限(なぎさ)に、

  鵜の羽を葺草(かや)に爲(し)て、

 産殿(うぶや)を造りき。

 是(ここ)に其の産殿、

 未だ葺き合(あ)へぬに、

 御腹(みはら)の急(あわただ)しさに

 忍(しの)びず。

 故、産殿に入り坐(ま)しき。

 爾に將方産みまさむとする時に、

 其の日子(ひこぢ)に白したまひしく、

 「凡(すべ)て佗國(あだしくに)の人は、

  産まむ時に臨(な)れば、

  本つ國の形を以ちて産生(う)むなり。

  故、妾(あれ)今、本の身を以ちて産まむとす。

  願はくは、妾(あ)を見たまひそ。」

 と言(まを)したまひき。
 
 是(ここ)に其の言(こと)を

 奇(あや)しと思ほして、

 其の方産まむとするを竊伺(かきま)みたまへば、

 八尋和邇に化(な)りて、匍匐(は)ひ

 委蛇(もこよ)ひき。

 即ち見驚き畏みて、

 遁(に)げ退(そ)きたまひき。

 爾に豐玉毘賣の命、

 其の伺見(かきまみ)事を知らして、

 心恥(うらは)づかしと以爲(おも)ほして、

 乃ち其の御子を生み置きて、

 「妾恆(あれつね)は、海つ道(ぢ)を通して

  往來(かよ)はむと欲(おも)ひき。

  然れども吾が形を伺見(かきまみ)たまひし、

  是れ甚怍(いとは)づかし。」と白したまひて、

 即ち海坂(うなさか)を塞(さ)へて返り入りましき。

 是を以ちて其の産みましし御子を名づけて、

 天津日高日子(あまつひこ)波限(なぎさ)

 建鵜葺草(たけうがや)葺不合(ふきあへず)命と謂ふ。

 【波限を訓みて那藝佐と云ひ、葺草を訓みて加夜と云ふ】

 然れども後は、

 雖其の伺(かきま)みたまひし情(こころ)を恨みたまへども、

 戀しき心に忍びずて、

 其の御子を治養(ひた)しまつる縁(よし)に因(よ)りて、

 其の弟(おと)、玉依毘賣に附けて、歌を獻りたまひき。

 其の歌に曰ひしく、

  阿加陀麻波 袁佐閇比迦禮杼 斯良多麻能
 
  赤球(あかだま)は 緒(を)さへ光れど 

  白玉(しらたま)の

  岐美何余曾比斯 多布斗久阿理祁理
 
  君が装(よそひ)し 貴くありけり

 といひき。

 爾に其の比古遲(ひこぢ)【三字は音を以ゐよ】

 答へて歌ひたまひしく、

  意岐都登理 加毛度久斯麻邇 和賀韋泥斯 
 
  沖つ鳥 鴨著(ど)く島に 我が率寝(ゐね)し

  伊毛波和須禮士 余能許登碁登邇
 
  妹(いも)は忘れじ 世のことごとに 

 とうたひたまひき。

 故、日子穗穗手見の命は、高千穗の宮に、

 伍佰捌拾歳(いほちまりやそとせ)坐(ま)しき。

 御陵(みはか)は、即ち其の高千穗の山の西に在り。

 是の天津日高日子波限建鵜葺草葺不合の命、

 其の姨(をば)、玉依毘賣の命を娶(めと)して、

 生みませる御子の名は、五瀬(いつせ)の命。

 次に稻氷(いなひめ)の命。次に御毛沼(みけぬの)の命。

 次に若御毛沼(わかみけぬ)の命、亦の名は豐御毛沼の命、

 亦の名は神倭伊波禮毘古(かむやまといはれひこ)の命。

 四柱 

 故、御毛沼の命は、

 浪の穗を跳(ふ)みて、常世(とこよ)の國に渡り坐(ま)し、

 稻氷の命は、妣(はは)の國と爲(し)て、海原に入り坐しき。

 《参考》

 ARPACHIYAH 1976
 高床式神殿、牛頭、空白の布幕、幕と婦人、マルタ十字紋等
 (アルパチア遺跡出土の碗形土器に描かれている) 
  
 牛頭を象った神社建築の棟飾部

 本生図と踊子像のある石柱

 Tell Arpachiyah (Iraq)
 Tell Arpachiyah (Iraq)    
 ハラフ期の土器について
 ハブール川
 ハブール川(ハブル川、カブル川、Khabur、Habor
、Habur、Chabur、アラム語:ܚܒܘܪ, クルド語:Çemê Xabûr, アラビア語:نهر الخابور Bahr al-Chabur
 ARPACHIYAH 1976
 高床式神殿
 牛頭を象った神社建築の棟飾部
 神社のルーツ
 鳥居のルーツ
 

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